2010年6月30日水曜日

幼稚園とは

学校法人についてざっと説明しましたので、これからは、各学校について簡単に説明します。まず、学校教育法で定められた学校を順に見ていきます。最初は、幼稚園です。

基本的なことですが、幼稚園は文科省所轄で、保育所は厚労省所轄になります。同じ年の子どもを預っているいるのですが、両者はまったく別物ということになります。そのため、幼稚園は原則として学校法人が、保育所は社会福祉法人が設置することになります。

幼稚園は、学校教育法でその目的を「義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長すること。」と定めています。

この幼稚園を作るには、「学校教育法」という法律や「学校教育法施行規則」「幼稚園設置基準」という文部省令に合わせる必要があります。さらに、都道府県ごとに細かな規定を定めている場合は、それにも適合させることになります。

詳細は、別途書きますが、簡単に必要な基準を並べると次のようになります。

・1クラスは35名以下
・先生は、校長と各学年に一人以上の専任の教諭
・建物は2階建て以下で、1学級だと180平米以上、2学級で320平米以上、3学級以上は1学級につき100平米を加算
・運動場は、2学級だと360平米以上、3学級で400平米以上、4学級以上は1学級につき80平米を加算

これら以外に、必須の施設や教具等も決められていますが、概ね上記の基準を満たせば、あとはなんとかなるでしょう。

2010年6月26日土曜日

学校法人の基本的な性質5

これまで何度か出てきた「寄付行為」について、少し書いておきます。寄付行為と書いていますが、私立学校法では「寄附行為」という漢字を使っています。この法律の30条には、次のようにあります。

学校法人を設立しようとする者は、その設立を目的とする寄附行為をもつて少なくとも次に掲げる事項を定め、文部科学省令で定める手続に従い、当該寄附行為について所轄庁の認可を申請しなければならない。


つまり、学校法人を作るということは、寄付行為という文書を認可してもらうということになります。会社の定款にあたる部分ですが、この寄付行為に書いてある通りに、創立者から寄付してもらった財産を管理、運用して、学校を運営することになります。学校で言う憲法のようなものです。


この寄付行為は、定款と同じように、法務局に登記する際に、添付します。設立時だけでなく、登記内容の変更の際にも添付します。


また、寄付行為を変更することは可能ですが、所轄庁の認可がなければ有効になりません。変更の手続も寄付行為の中で定めることになります。


この寄附行為は、多くの学校法人がHPで公開していますので、それらを参考にすれば、作成することは、難しくありません。しかし、いい加減に作ると後から大変なことになる場合もありますので、慎重に検討する必要があります。詳しくは、今後、解説していきます。

2010年6月23日水曜日

学校法人の基本的な性質4

これから学校を作ろうという方は、基本的に学校法人を設立し、その理事長に就任することになると思います。もちろん、信頼できる人に理事長をお願するという方法もありますが、理事長や理事会を理解せずに、学校法人の運営はできませんので、もう少し、詳しく解説します。

理事長ないし理事会は、学校法人の運営方針を決めるのが仕事ですので、毎日仕事があるわけではありません。そこで、非常勤の理事長や理事というケースもあり得ます。すべての理事が非常勤という学校法人もあります。

理事が非常勤ばかりだと、どうやって経営するんだと疑問になりますが、「学校法人の基本的な性質3 」で書いたように、学長・校長のうち一人は必ず理事になりますので、一人は必ず法人内にいるということになります。この場合でも、この学長・校長は、普段は学長・校長の仕事をしているのであって、理事としての仕事は、その合間にしているに過ぎません。

常勤の理事や理事長という場合、理事・理事長の仕事に専念し、学校法人に常駐できる状態の人を言います。そういう理事を常務理事と表現している場合もありますが、常務理事という名称は、その法人固有の言い方です。

専任の常勤理事を置いている方が例外で、多くの学校法人では、学長・校長との兼務であったり、事務局長や職員、教員を理事にしているのが実情です。このような教職員兼任の理事は、教職員としての給与を貰っているに過ぎず、理事としては無給の場合が大半です。つまり、普段は教職員としての仕事に専念し、理事会のときだけ理事としての仕事をしていることになります。

このように、常勤の理事が教職員の兼務で、それ以外の理事が非常勤というのが中小の学校法人の実態でしょう。もちろん、大きな大学法人になれば、常勤の理事を置いていますが、これから学校法人を作ろうという場合には、常勤の理事に給与を支払う余裕はないと考えるべきでしょう。

法的には、このような教職員の理事と非常勤理事でも問題ありません。しかし、学校法人の理事は経営者です。優秀な教職員が必ずしも経営者として優れているとは限りませんし、24時間365日、経営のことを考えている人がいなくて、学校法人の運営が適切に行えるかは別問題です。もちろん、学校法人が設置する学校が1つしかない場合には、学長・校長が理事長を兼ねて、すべてを見るということもあり得ます。その方が人件費が節約できます。幼稚園や専門学校などで小規模な法人に多いパターンでしょう。

ただし、学校法人を代表するのは原則として理事長のみですので、理事長は常勤が望ましいということになります。理事長が名誉職的に非常勤という学校法人も見受けられますが、理事長の権限を強化するために改正された私立学校法の主旨から考えても適切とは言えません。

理事会のことを例えて、プロ野球のフロント、学長・校長を監督と表現した人がいました。また、学長・校長が社長であれば、理事会は株主とも言えます。しかし、大きく違うのは、株主であれば、その責任は出資額に限定されますが、理事は学校法人を代表しますので、学校法人が第3者に与えた損害は、それを賠償する責任を負います。つまり、無限責任です。寄附行為で代表者を理事長に限定することは可能ですが、善意の第3者に対抗できるとは限らず、理事も無限責任を問われる可能性はあります。少なくとも、理事長は無限責任であるということは、理解しておく必要があります。

2010年6月20日日曜日

学校法人の基本的な性質3

学校法人の運営は理事が担うことになりますので、この理事の役割を理解することが、学校法人の理解に役立ちます。

まず、基本的な事項です。学校法人の理事は5名以上で、そのうち一人が理事長になります。その理事で理事会を構成し、理事会は「学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する」(私立学校法36条2)ことになります。平たく言えば、方針を決定、その方針通りに運営されているかを監督することです。そして理事長は「学校法人を代表し、その業務を総理」(私立学校法37条1)します。

この理事は、会社の取締役同様に登記し(組合等登記令)し、かつ所轄官庁に届出(私立学校法施行令1条1)をする必要があります。以前は、理事全員の登記が必須でしたが、平成17年4月より、理事長と寄附行為で定めのある理事のみを登記すれば良いとことになりました。

これの意味するところは、理事全員で協議していたのでは、変化の早い時代に合わず、理事長に権限と責任を集中して、スピード感のある運営を目指そうということです。

そうなる、理事長の独裁になるのではないかとう懸念がありますが、ちゃんと抑止する仕組みがあります。

まず、理事長は代表ではあっても、業務を決定するのは理事会ですので、理事会の反対を押し切ってすべてを決定することはできません。その理事会は過半数の出席なければ成立せず、過半数の賛成がなければ決定できません。

さらに、その理事会を身内で固めようと思っても、3親等以内は一人しか入れることはできません。また、その学校法人が設置する学校の長を一人は理事に入れる必要があります。

理事会の暴走を防ぐために、監事と評議員会を置くように義務付けられています。監事は学校法人の業務や財産の状況を監督し、評議員会は重要な事項に関して、理事会に意見を述べたり、報告を聞いたりします。この評議員会の代表が最低一人は理事になります。また、評議員には、その学校法人の職員や卒業生を加えることが義務付けられています。

このように、理事会の暴走や理事長の私物化を防ぐ仕組みが一応は用意されています。しかし、それは企業における取締役会や株主総会のそれと同じく、法律の理念と現実が必ずしも一致しているとは言えません。このあたりは、今後、詳しく書いていきます。

2010年6月17日木曜日

学校法人の基本的な性質2

学校法人が寄付で設立されることは、前回書きました。財団法人同様に、財産が基本的な性質ということになります。そして、その財産を運用し、設立時に寄付した人が設定した目的の達成のために使うのが理事の役割ということになります。

財団法人の場合、この当初の目的を変更するこは基本的にできません。目的が達成されたり、達成することが困難であることがはっきりした段階で解散ということになります。

しかし、学校法人の場合は、当初の学校と違う学校を運営したり、学校の内容が変わることは許されています。しかし、学校が1つもなくなった場合は、解散することになります。学校を運営することが目的で設立されるのが、学校法人ですから、当然と言えます。

もう少し、具体的に、設立時の様子を見てみます。まず、誰か、学校を作りたい、もしくは、作って欲しいと思って、私財を寄付します。寄付した人は、自らが理事として学校法人の管理をしても良いですが、誰かに託すこともできます。寄付した段階で、この財産は、個人のものではなく、学校法人のものとなります。もちろん、理事のものでもありません。理事は、管理を任されているだけです。寄付した人の意図は、設立時に作成される寄附行為という文書に盛り込まれます。

理事は、この寄附行為にしたがって、寄付された財産を利用して、学校を運営することになります。この寄附行為には、寄附行為を変更する場合の手続も記されていますので、この手続に従えば、変更することもできます。しかし、寄附行為の変更は、監督官庁の認可が必要ですので、理事が自由勝手に変更できる訳ではありません。

まとめますと、学校法人は、誰かの寄付で設立され、寄付した人はその財産でどのような学校を運営して欲しいかを寄附行為という文書にします。理事は、その寄附行為にしたがって、寄付された財産で学校を運営するということになります。

2010年6月12日土曜日

学校法人の基本的な性質1

学校法人のメリットは、まだまだありますが、それらのメリットを説明することは、学校法人の仕組みを理解することにもなりますので、メリットについてはこれくらいにして、本論に入っていきたいと思います。

まず、学校法人を理解するために、学校法人の基本的な性質について簡単に説明します。学校法人は学校を設置するためだけに作られた法人なのですが、学校法人という制度が出来る前は、財団法人が使われていました。そのため、学校法人の基本的な性質は財団法人のそれに似ています。財団法人は、現在は法改正で、公益財団法人と一般財団法人に分かれましたが、かつては、公益目的のみが認められ、民法34条で、次のように定められていました。、

学術、技芸、慈善、祭祀(し、宗教その他) の公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。

これが、ルーツということのなります。そのため、いまでも学校法人の一番重要な文書(企業で言う定款)は、寄附行為と言います。

ですので、財団法人の基本が分かれば、学校法人も理解できることになります。財団法人とは、個人や企業などからの寄付で設立されて、その寄付を運用することで得られた利益で公益事業を行う法人になります。ただし、2008年12月の法改正で、公益性がない事業を行う一般財団法人の設立もできるようになりました。もちろん、学校法人は公益事業を行う公益財団法人の流れを引き継いでいます。

ここで、重要なのは、法人を構成するのは寄付された財産であるということです。社団法人が個人や法人で構成されるのと違います。財産はお金とは限らず、土地や建物などでも構いません。その財産を管理・運用する責任を負うのが理事と言うことになります。

学校も、通常は、設立時に校地・校舎や教具などが必要となりますので、これらを直接寄付してもらうか、購入に必要なお金を寄付で集めることからスタートします。

ここで重要なのは、設立時に必要な校地・校舎などは寄付であるという点です。もちろん、正しい手続きに従えば、これらを寄付した人には、優遇税制が適用されます。

2010年6月8日火曜日

学校法人のメリット(番外)

学校法人の税制面のメリットがもう1つあります。公に書くのも躊躇しますので、番外としました。それは、相続対策です。これは、学校法人の基本的な性格によるものですので、今後、詳しく書いていきますが、この性格を悪用(あえて「悪用」と書きます)すれば、相続税を逃れることができます。

そもそも、学校法人には相続という概念はありません。学校法人の財産は個人のものではなく、法人として引き継がれるもので、その財産の管理を委託されているが理事です。逆に言えば、この理事の椅子を引き継げば、学校法人を引き継いだことになります。役割を引き継ぐだけですから、相続税はかかりません。しかし、実質的に、法人の全権を引き継げば、相続したのに近い効果が生まれます。

つまり、理事のポストを円満に子どもに引き継げば、相続税を払うことなく、学校法人を相続できるということです。もちろん、学校法人を引き継いだからと言って、それを勝手に処分して個人財産とするこはできません。しかし、株式会社の場合、その株を相続するのに相続税が掛かることを思えば、有利であることに間違いありません。

もちろん、勝手に子どもを理事にすることはできません。ちゃんと法律で定められた手順で子どもが理事に選出される必要があります。この手順についても、追って書いていきます。