2010年10月30日土曜日

議事録(寄附行為の書き方)

(議事録)
第十九条 議長は、理事会の開催の場所及び日時並びに議決事項及びその他の事項について、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、出席した理事全員が署名押印し、常にこれを事務所に備えて置かなければならない。


議事録を残すことは当然ですが、出席理事全員の署名押印を明記しています。一般的な議事録であれば、署名人が代表して署名押印することが多いのですが、あえて出席理事全員としています。これは、法令で要求されているわけではないのですが、文科省が口頭で指導しているようです。しかし、実際問題として、理事会の直後に議事録が完成しているわけではなく、後日に署名押印をもらうには、手間がかかります。郵送のやりとりを何度も繰り返すことになり、外部理事が多い場合は大変です。あらかじめ、ある程度議事録を作成しておいて、その場で完成して署名押印をもらうなどの方法も考える必要があります。

評議員会は代表として署名人のみの署名押印でも支障ありません。また、社会福祉法人などでは実印の押印を求めているようですが、学校法人の場合は、実印である必要はありません。

もちろん、欠席した人は議事録に署名押印できませんので、あらかじめ意思を表明した委任状に署名押印することで代えることになります。この委任状も議事録と共に保管しておくことになります。

2010年10月24日日曜日

業務の決定の委任(寄附行為の書き方)

(業務の決定の委任)
第十八条 法令及びこの寄附行為の規定により評議員会に付議しなければならない事項その他この法人の業務に関する重要事項以外の決定であって、あらかじめ理事会において定めたものについては、理事会において指名した理事に委任することができる。


この条文がないと、すべての意思決定を理事会で行うことになります。重要でない事項は理事長や常務理事などに委任できるようにするには、このような条文が寄附行為に必要となります。私立学校法では、7つの項目(詳細に22条で解説)に関して評議員会の意見を聞くことを求めていますが、寄附行為で議決を求めることも可能です。また、私立学校法では、学校法人の解散は理事の3分の2以上の同意が必要と定められています。解散以外でも、予算、決算、多額の借入や学校の設置、募集停止など重大な事項を理事長に委任するのは不適切とみなされる可能性が大きいと思われます。理事会を形骸化させることなく、かつ、迅速な運営ができるように、理事会で理事長などに委任する事項を検討してください。

2010年10月17日日曜日

理事会(寄附行為の書き方)

(理事会)
第十七条 この法人に理事をもって組織する理事会を置く。
2 理事会は、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する。
3 理事会は、理事長が招集する。
4 理事長は、理事総数の三分の二以上の理事から会議に付議すべき事項を示して理事会の招集を請求された場合には、その請
求のあった日から七日以内に、これを招集しなければならない。
5 理事会を招集するには、各理事に対して、会議開催の場所及び日時並びに会議に付議すべき事項を書面により通知しなければならない。
6 前項の通知は、会議の七日前までに発しなければならない。ただし、緊急を要する場合はこの限りでない。
7 理事会に議長を置き、理事長をもって充てる。
8 理事長が第四項の規定による招集をしない場合には、招集を請求した理事全員が連名で理事会を招集することができる。この場合における理事会の議長は、出席理事の互選によって定める。
9 理事会は、この寄附行為に別段の定めがある場合を除くほか、理事総数の過半数の理事が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。ただし、第十二項の規定による除斥のため過半数に達しないときは、この限りではない。
10 前項の場合において、理事会に付議される事項につき書面をもって、あらかじめ意思を表示した者は、出席者とみなす。
11 理事会の議事は、法令及びこの寄附行為に別段の定めがある場合を除くほか、出席した理事の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
12 理事会の決議について、直接の利害関係を有する理事は、その議事の議決に加わることができない。


この例では、12の項目が書かれていますが、私立学校法では、第36条に次の6項目があるだけです。

第三十六条  学校法人に理事をもつて組織する理事会を置く。
2  理事会は、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する。
3  理事会は、理事長が招集する。理事(理事長を除く。)が、寄附行為の定めるところにより、理事会の招集を請求したときは、理事長は、理事会を招集しなければならない。
4  理事会に議長を置き、理事長をもつて充てる。
5  理事会は、理事の過半数の出席がなければ、その議事を開き、議決することができない。
6  理事会の議事は、寄附行為に別段の定めがある場合を除いて、出席した理事の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

ここで、重要なのは5項目目の「過半数の出席がなければ議決できない」という項目です。この私立学校法の規定を受けて、寄附行為の例では、9項目目にその旨を規定しています。名前ばかりの理事で理事会を構成した場合、定足数に達しなくて議決が出来ないということになります。そこで、委任状による出席も認めるようにする必要があります。しかし、委任状は、いわゆる白紙委任状では、有効性を問われることがあります。賛否を含めて意思を表明した委任状を文書で提出してもうようにしましょう。

また、例の第5項にある、書面による通知や第6項の7日前の通知は、法律では要求されていませんので、裁量の余地はあります。しかし、議事の内容の通知がない場合、次条の委任状による出席が認められなくなる可能性もありますので、この条項は盛り込む方が良いでしょう。また、通知が直前の場合、欠席した理事から訴えられると、理事会の有効性を問われることになります。

2010年10月9日土曜日

監事の職務(寄附行為の書き方)

(監事の職務)
第十六条 監事は、次の各号に掲げる職務を行う。
一 この法人の業務を監査すること。
二 この法人の財産の状況を監査すること。
三 この法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後二月以内に理事会及び
評議員会に提出すること。
四 第一号又は第二号の規定による監査の結果、この法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときは、これを文部科学大臣(都道府県知事)に報告し、又は理事会及び評議員会に報告すること。
五 前号の報告をするために必要があるときは、理事長に対して評議員会の招集を請求すること。
六 この法人の業務又は財産の状況について、理事会に出席して意見を述べること。


この条文は、私立学校法の37条の3を受けて定められています。法令の条文そのままですので、特に変更する必要はないでしょう。

学校法人の不祥事や経営破綻が増えてきたことから、監事の役割が重要視されつつあります。そのため、理事会には毎回、監事の出席が求められます。監督官庁とすれば、日常的に学校法人を監督することが不可能なため、監事にその役割を求めているということになります。年に一度、監事報告にはんこを押すだけの監事ではなく、学校法人、理事会から独立した立場でチェックできる人を選ぶ必要があります。

大規模な学校法人の場合、常勤の監事を置いている場合もあります。その場合、監事を補佐するための職員も配置することもあります。

ただ、監事は理事長が選任するとなっている場合が多く、理事長の意向に反した意見を述べにくいという問題があります。あえて、苦言を呈してくれる監事を選任できるかが、理事長の手腕と言えるかも知れません。

2010年10月3日日曜日

理事長職務の代理等(寄附行為の書き方)

(理事長職務の代理等)
第十五条 理事長に事故があるとき、又は理事長が欠けたときは、あらかじめ理事会において定めた順位に従い、理事がその職務を代理し、又はその職務を行う。


14条で代表権を理事長に限定した場合、その理事長に万一のことがあると、たちまち代表者不在ということになります。そこで、あらかじめ、理事長に事故があった場合の代理を定めておく必要があります。寄附行為では、その代理の指名方法を定めておき、具体的な氏名は別途決めることになります。この例では、理事会で指名すると定めてありますが、理事長の選任方法に準じておくのが良いでしょう。理事長を理事会の決議で選出するのであれば、代理も同様とします。

理事長以外に代表権のある理事を置く場合は、その理事が代理となるのが自然ですが、複数いる場合は、その順序を寄附行為で定めておきましょう。

小規模校では、理事長以外に常勤の理事がいないという場合も多いと思われますが、その場合、非常勤の理事であっても万一の場合の代理をお願いすることになります。あらかじめ、了解を得て指名するようにしてください。