2010年5月31日月曜日

学校法人のメリット(3)

学校法人が直接関わる優遇税制以外に、もう1つ税制的なメリットがあります。それは、寄付控除という制度です。

寄付控除とは、学校法人に寄付をした個人や法人は税金が助かるという制度です。具体的には、個人は寄付金額が5千円以上(総所得金額等の40%が上限)の場合に、その金額を所得から控除、法人は、寄付金の全額が損金算入できるというものです。

分かりやすく言い換えれば、個人は2000円以上寄付(22年4月1日から従来の5000円以上から改正)すれば、寄付した金額分を収入から引いて、所得税を計算し直します。サラリーマンの場合は、源泉徴収で所得税を天引きされていますので、確定申告することで、税金が戻ってきます。個人事業主などで確定申告をする場合は、所得から寄付した金額を引いて申告できます。税率が10%の場合ですと、5000円寄付すると500円ほど税金が返ってくることになります。

たった500円のために確定申告するのは面倒と思われるかも知れませんが、いまは、電子申告と言って、インターネットで申告ができますので、税務署へ足を運ぶ必要もありません。住民基本台帳カードとICカードリーダーが必要ですので、1回だけの申告では、元は取れないかも知れませんが、継続的に寄付したり、多額の寄付をされる場合は、所得控除の恩恵も大きくなります。

また、確定申告が寄付をする障害になっているということから、年末調整で済ませることができるように法改正する動きがあります。年末調整であれば、学校法人から発行される領収書を会社に提出するだけですので、寄付をする人が増えることが期待されます。

また、法人の場合は、全額が経費として認められますので、儲かってる会社であれば、税金で取られるくらいなら寄付をしても、会社としては同じことになります。そのため、社長が母校に多額の寄付をするということもあり得ます。

このような寄付控除の目的は、学校法人が広く寄付を集めることで、その運営基盤を強固にしようということです。学校法人は、そもそも国や地方公共団体が行うべき教育サービスの一部を民間が担っているわけですので、国民から税金で集めて学校法人に補助しても、国民が学校法人に寄付して税金を免除しても、結果的に同じということです。国や地方公共団体が配分するより、学校法人の自助努力で寄付を集める方が民主的とも言えます。寄付であれば、学校法人の教育成果に比例して、集まると考えることができます。

いずれにせよ、寄付控除があることで、寄付という形の資金が集めやすくなっています。株式会社が配当負担のある資本金や金利を払わなければならない借入でしか資金を集めることができないのに比べてはるかに有利と言えます。

ところが、実際には、日本ではアメリカなどに比べてあまり寄付が集まらないのが実情ではあります。日本には寄付の文化がないことに加えて、確定申告がネックになっているのでしょう。しかし、一部の伝統校などでは強力な同窓会が組織されて、多額の寄付が集まっています。また、企業からお金ではなく、商品を寄付してもらうケースも増えています。自社の商品であれば、お金で寄付するより、節税効果が高くなります。企業にしてみれば不要な在庫を処分しながら、経費に計上できるということになります。

学校法人は創立資金は寄付というのが基本的な考え方です。創立時だけなく、継続的に寄付を集める仕組みが学校法人の経営には重要とも言えます。

2010年5月29日土曜日

学校法人のメリット(2)

学校法人が非課税なのは法人税だけではありません。

消費税もかかりません。消費税は、受け取る側が負担するのではなく、支払う側が負担し、学校は代理で受領するだけですので、税金がかからないことによる直接的なメリットはありません。しかし、支払う側が消費税の負担がないとなると、税金がかかる他の教育機関より、学費の負担が少なく、入学者が増えることが期待できます。

もちろん、消費税が非課税になるのは、授業料など教育に直接関わる部分のみで、教科書代などは課税対象になります。通常は、学校の課税対象の売上は少ないはずですので、課税業者となる1000万円を超えることは稀と思いますが、教科書などの物品を学校が販売したり、食堂を直営している場合は、課税業者になる可能性があります。

消費税以外に、固定資産税や不動産を取得した際に課税される登録免許税なども非課税です。もちろん、これらも法律で規定されている学校の用途に使用する場合だけです。かつては、地価の上昇を見込んで、学校法人が土地を校地という名目で購入し、固定資産税を免れるという行為も見受けられました。いまでは、税務当局も実際に教育の用に供しているかを厳しくチェックするようになりました。しかし、校舎の近くで、運動場や自転車置場ということであれば、更地に近い状態で固定資産税を負担することなく、土地を保有できます。ただし、職員用の駐車場なら課税されるようですが。

このように学校法人が税制的にいろいろ優遇されていますが、文部科学省がまとめていますので、紹介しておきます。

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/003.htm

2010年5月26日水曜日

学校法人のメリット(1)

1条校を設置するには、民間では学校法人を作るしかないということはすでに書きました。特区を使えば株式会社でも学校を作ることはできますが、総合的に判断して、学校法人での設立をお勧めします。これから理由を書いていきます。

まず、何と言っても税金面の優遇があります。その中でも一番大きいのが法人税です。通常、株式会社は、その利益に対して30%の法人税や地方税である法人事業税などが課せられています。しかし、学校法人は、そのそも納税義務者に含まれていません。法人税法4条で、納税義務者が規定されているのですが、「内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。ただし、公益法人等又は人格のない社団等については、収益事業を行う場合・・・に限る。」となっています。


別表第2で、この公益法人が具体的に列挙されているのですが、社会福祉法人や宗教法人と並んで学校法人も明記されています。また、専修学校のみを設置している学校法人も含めると書かれています。


ということは、法人税については、免税というより、そもそも納税義務がないということになります。ただし、収益事業を行う場合は、納税義務があります。逆に言えば、収益事業以外は非課税ということになります。収益事業は、学校の運営を財政面で支援するために、収益を目的として学校法人が行う事業なのですが、何でも良いというわけではありません。日本産業分類に基づいて18種類が指定されています。18種類となると実質的にほとんどの業種が含まれ、禁止されているのは、貸金業、クラブ・キャバレー、武器製造、風俗業など、常識的に考えて教育になじまない業種に限られます。


つまり、学校法人は、学校以外の事業をすることは可能ですが、その場合は、課税されるということです。ただし、その場合でも、課税されるのは、収益事業に関する収益に対してであり、学校事業は課税されません。

しかも、この収益事業への課税も22%(一般法人は30%)という軽減税率が適用されます。しかも、みなし寄付金制度があり、所得の半分か200万円までであれば、学校に寄付したとみなして、損金として処理できます。つまり、乱暴に言えば、利益の半分にしか課税されないということになります。

一般法人の方から見れば、不公平な感じがしますが、これは、学校法人は教育を目的とし、本来であれば、国や地方公共団体が税金で行うべき教育の一部を民間が担っているため、その目的のために使われるお金であれば課税しないという考えに基づいています。学校法人が収益事業で利益を出しても、それは学校のために使われることを予定しているわけですから、課税する必要がないというわけです。

2010年5月24日月曜日

株式会社立

学校は、法律で国、地方公共団体か学校法人しか設立できませんが、特区で株式会社立も認められています。特区で例外的に認める必要があるということは、学校法人の設立が難しいからに他なりません。詳しくは、今後、じっくり説明しますが、一番の問題はお金です。

株式会社であれば、資本金が1円でも設立できます。しかし、学校法人は学校を作るのに必要なお金に加えて、当面の運転資金も現金で保有していなければ認可されません。これは、認可されたものの、すぐに倒産などということがないようにするためです。その分、法人税などが免除されるなど、各種の優遇を受けることができす。

特区で株式会社での学校参入が認められた直後は、多くの株式会社が学校経営に参入しましたが、その大半が徹底もしくは苦戦を強いられています。原因は簡単です。お金がないから特区を使って参入した訳ですから、潤沢な自己資金を持っている学校法人に比べれば、利子や配当負担のある資金では不利になります。加えて、税負担もあります。上場して市場から新たな資金調達ができること以外、有利な点はないでしょう。

生徒や保護者から見ても、経営が不安定な株式会社立を積極的に選択する理由は見いだせません。もちろん、世界に名前の通っているような大企業が参入すれば、話は違ってくるかも知れませんが、そのような動きは見受けられません。また、これから学校を作ろうという人には、関係のない話です。

学校を作ってしまえば、母体が株式会社か学校法人かは、学んでいる人には関係のない話ですが、作る側には大きな選択となります。株式会社にもメリットはありますが、以下の理由で、私は学校法人をお勧めします。

1.撤退が続いており、社会的な評価が良くない
2.上場した場合、誰が株主になるか分からず、学生や保護者が株主となった場合、公平な教育が行える保証がない
3.税制面の不利がある
4.寄付をした人の所得控除が使えない(寄付を集めにくい)

特区で認められている以上、行政としても表向きは受け付けるでしょうが、実際は、学校法人での申請を強く勧められると思われます。実際、当初は株式会社での参入を表明したところが、最終的には学校法人で申請したり、いったん株式会社で設立したものの、学校法人に変更した例が相次いでいます。

株式会社での参入を認めるという特区の精神は良かった思いますが、特区が経済的な側面しか見ないため、永続的に学校を運営するための仕組みについての検討が足りなかったのでしょう。残念ですが、特区による株式会社での学校設立は失敗と思います。

そのため、これから学校を作る場合は、学校法人を前提に考えてください。学校法人の設立も難しくはありません。もちろん、株式会社よりは時間も手間もかかりますが、それに見合ったメリットがあります。そして、目指す教育を後世に残すための最善の方法なのです。

2010年5月23日日曜日

専修学校とは

ここで、専門学校、各種学校、専修学校についてまとめて整理しておきます。専門学校という言葉は日常的に使いますが、新聞などでも間違えている場合があります。

まず、専門学校を名乗れるのは専門課程を置いている専修学校だけです。ちゃんと学校教育法の126条に規定されています。ここで注意が必要なのは、高等専門学校と専門学校は、まったく別の学校ということです。高等専門学校は、学校教育法1条に定められている学校で、高校と短大を合わせたような学校です。専門学校は専修学校の中で、高校を卒業した人が入学する2年以上の課程(専門課程)を置いている場合に限定されます。

専修学校には、この専門課程以外に、中卒対象の高等課程があり、この場合は、高等専修学校を名乗ることができます。専門課程、高等課程以外に誰でも入学できる一般課程というのもあります。

各種学校というのは、学校教育法の1条で規定されている学校と専修学校以外ということになります。この各種学校も法律で要件が定められ、都道府県知事の認可を受ける必要があります。そのため、「各種の学校」とは意味が違います。

ところで、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校は学校教育法の1条で規定されていますので、1条校という表現をし、専修学校と別に捉えられることが多くあります。さまざまな法律で、学校を指す場合に「学校教育法の1条で定める学校」という表現を用いられると専修学校が対象から漏れてしまいます。そのため、いろいろな不利益があると専修学校関係者は訴えています。逆に、監督が緩やかという面もありますので、一概に不利とはいい切れないですが、同じ世代の教育を受け持っていても、専門学校と短大、高等専修学校と高校では、世間の受け取り方が違うのは確かかも知れません。それが、法律の条文が原因とは言い切れませんが。

専修学校が1条校でないため、2条の制限を受けないという面もあります。2条とは、学校を設置できるのが、国、地方公共団体、学校法人に限定されている条文です。そのため、法律上は、専修学校は個人や株式会社でも設立することができます。実際、個人、財団法人、社団法人、宗教法人などが設置しているケースがあります。しかし、今後の新設となると、多くの都道府県が、学校法人による設置を指導しているのが実情ですので、簡単ではないかも知れません。

2010年5月18日火曜日

私立学校とは

学校を作るには文部科学大臣か都道府県知事の認可が必要なことは、「認可とは」で書きましたが、じゃー、私でも作れる?と思った方もおられるでしょう。残念ながら、学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校)を設置できるのは、学校教育法の第2条で、国、国立大学法人、地方公共団体、学校法人に限定されています(専門学校は、これらの学校に含まれませんので、別に詳しく書きます)。

私たち個人は、国や地方自体にはまれませんので、学校法人を作らない限り、学校を作れないということになります。この学校法人が作った学校がいわゆる私立学校になります。

じゃー、学校法人はどうやって作ればいいの?ということなりますが、これもちゃんと「私立学校法」という法律があります。ここに、条件や作り方が書いてあります。細かな規定は、「私立学校法施行令」や「私立学校法施行規則」に書かれています。しかし、学校法人も認可が必要で認可は文部科学大臣と都道府県知事に分かれますので、実際の基準は国や都道府県によって違ってきます。

学校法人は公益法人の一種で、財団法人に近い性質になりますが、詳しくは、今後書いていきますので、ここでは、学校を作るには、学校法人を作ることとセットだいうことだけ覚えておいてください。

でも、株式会社立の学校もあるって聞いたことがありますよね。そうです。最近は特区(構造改革特別区域)で、株式会社でも学校を作れるようになりました。このことも、今後、書いていきます。




2010年5月17日月曜日

認可とは

学校教育法という法律で、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校と専修学校、各種学校(各種の学校ではなく各種学校。詳しくは後日)を作るには、ちゃんと認可を受ける必要があります。


話を簡単にするために私立に限って書けば、大学と高等専門学校は文部科学大臣、幼稚園、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校、各種学校は都道府県知事の認可が必要です。


一応、「認可」という意味も確認しておきましょう。認可とは法律行為の効力を発揮させるために行われます。そのため、認可を受けないで行うことは、禁止されるわけではありませんが、法律的な効力はないということになります。大学や高等学校など法律で定められている名称を勝手に使うと罰金の規定はありますが、名前を使わなければ大学や高校のような教育機関を作ること自体は禁止されていないということなります。


しかし、認可を受けていないので、勝手に作った教育機関で卒業証書や資格の証明書を発行しても、法的な効力はありません。つまり、大卒にも高卒にもならないということになります。


認可の基準は法律で定められていますので、基準を満たせば、認可される可能性は大きいと言えます。しかし、裁量の余地は認めれていますので、基準を満たすだけで自動的に認可されるわけではありません。

2010年5月16日日曜日

学校とは

いきなり堅苦しい話からですが、「学校」という言葉をちゃんと定義しておく必要があります。
というのも、実は学校は法律でしっかり決まっています。学校教育法という法律があって、その第1条で


この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。


と定義されています。えっ? じゃー、英会話学校や専門学校は学校じゃないの? と疑問になります。専門学校については、この法律の後ろの方で定義されていますので、学校に含めることができますが、英会話学校や自動車学校はこの法律では学校ではないことになります。


もちろん、日常会話で英会話学校という表現を使っても支障はないのですが、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校や専門学校、専修学校、各種学校という名称は、それぞれの学校として認可された教育機関以外は使うことができません。ちゃんと、罰則もあって、10万以下の罰金となります。


ですので、学校といえば、法律で定義された種類に限定し、それ以外の教育機関は教室やスクールと表現することが多いようです。防衛省が設置している防衛大学校や、厚労省の職業能力開発大学校は、大学ではなく大学校と名乗っているのは、学校教育法で言う大学ではないからです。


逆に、大学や高校は大学や高校と名乗る義務はないので、少し混乱します。慶応義塾は、大学は慶應義塾大学ですが、高校は慶應義塾高等学校もありますが、慶應義塾普通部とか慶應義塾湘南藤沢高等部もあります。なので、例えば、和田公人学園高等部となると、高等学校なのかどうか、名前だけでは見分けがつかなくなります。


少なくとも、高等学校と名乗っていれば、法律にしたがって作られた高校と思って間違いなく、もし、勝手に高校を名乗っていれば、大問題ということです。

2010年5月15日土曜日

ごあいさつ

「学校って作れるの?」「学校ってどうやって作ればいいの?」そんな疑問にお答えします。
自分の周りに学校を作った人なんていないのが普通です。株式会社を作った人はいても、学校を作った人はめったにいません。
株式会社より、お金も、手間も必要かも知れませんが、学校の作り方は、法律でちゃんと決まっています。それに従えば、作れます。
しかし、一番重要なのは、教育への熱い情熱で、確固たる教育理念です。

ここでは、そんなことを徐々に説明していきたいと思います。